月極駐車場賃貸借契約書
月極駐車場賃貸借契約書のサンプル、記入例
月極駐車場の経営を始めようとするオーナーさん向けに、月極駐車場の契約をする際に必要になる駐車場賃貸借契約書のひな形とその記入例、解説を行います。
駐車場賃貸借契約書・サンプル(Wordファイル)
駐車場賃貸借契約書・記入例(Wordファイル)
月極駐車場賃貸借契約書の構成
サンプルとして提供している駐車場の賃貸借契約書は、1枚目が契約をする駐車場の情報、契約条件、期間、賃料、貸主、借主の情報を記入するものになっており、2枚目、3枚目はその契約の条項になっています。
契約条項のボリュームがやや多いため、契約条項が 2ページにわたってしまっていますが、これを 1ページにまとめ、表面に「駐車場賃貸借契約書」、裏面に「契約条項」の構成にする方がいいでしょう。
契約書を複数枚にすると製本したり割り印を押したりするのが面倒になりますからね。
また、実際の契約に際しては、1枚目の賃貸借契約書の各項目は毎回その契約ごとに作成します。
ですが、2枚目、3枚目は常に同じでいいように作られていますので、より実務的に書類を作成できるようになっています。
駐車場賃貸借契約書の内容
駐車場賃貸借契約書の契約条項の内容は、以下の通りとなっています。
第1条(契約の締結)
貸主(以下「甲」という。)および借主(以下「乙」という。)は、標記示物件(以下「本物件」という。)について、以下の条項により賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結した。
第2条(契約期間)
契約期間は標記表示の賃貸借期間とする。
2. 本契約の更新は標記表示の通りとする。
3. 乙は、本条により本契約が更新される場合は、標記表示の更新料を甲に支払うものとする。
第3条(駐車料金)
使用料金等は、月額を標記表示のとおりとし、乙は標記表示の支払期限、支払い方法にて一括して支払うものとする。なお、送金手数料は乙の負担とする。
2. 甲は、公租公課または経済変動あるいは契約車種の変更により必要と認めるときは、契約期間中といえども、1ヶ月の予告期間をもって前項使用料金等の改定を請求することができる。
3. 契約の始期または終期もしくは前項による改定時における1ヶ月に満たない端数の期間にかかわる使用料金等はすべてその月の日割り計算によるものとする。
第4条(敷金)
乙は、本契約締結と同時に、本契約に基づく債務を担保とするため敷金または保証金(以下「敷金」という.)として標記表示の金額を甲に預け入れるものとする。
2. 乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって使用料金等の債務と相殺することができない。
3. 本物件の明け渡しがあったときは、標記表示の金額を償却するものとする。また、甲は遅延なく、敷金の残額を無利息で乙に返還しなければならない。ただし、甲は、本物件の明け渡し時に使用料金の滞納、原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、当該債務の額を敷金から差し引くことができる。
また、支払いは乙が指定する銀行口座とし、その際の振込手数料は乙が負担するものとする。
4. 乙は、敷金に対する債権を第三者に譲渡または債務の担保の用に供してはならない。
5. 前条により使用料金等の改定があった場合は敷金もこれに準じて改定するものとする。
第5条(乙の賠償義務)
乙またはその代理人、使用人、運転手、同乗者、その他乙に関係する者が故意または過失により、本物件またはその施設もしくは本施設に駐車中の他の車両またはその付属品等に損害を与えたときは、乙は自己の責任においてその損害を直接相手方に対して賠償しなければならない。
第6条(甲の免責)
天災地変、盗難、他車両による事故、その他の責に帰するべからざる理由により、乙の車両その他の物品に損害が生じても、甲は一切その責を負わないものとする。
2. 第三者が無断で駐車した場合、甲はその責を負わない。
第7条(解約)
乙が下記の各号の一に該当するとき、甲は直ちに本契約を解除することができる。
一 使用料金等を2ケ月分滞納したとき。
二 本契約の各条項に違背したとき。
三 再三の使用料金滞納等により甲との信頼関係を著しく損なったとき。
四 本物件の駐車場、および、本物件の駐車場内の車両等に著しい損害を与えたとき
2. 本契約はその賃貸借期間中であっても甲、または乙は解約することができる。解約の申し入れに際しては、甲・乙は各々標記表示の予告期間をもってそれぞれの相手方に書面により通知しなければならない。ただし、乙は予告にかえ、1ケ月分の使用料金等相当額を甲に支払うことにより、即時解約することができる。なお、乙が解約の通知をしたときは、甲の書面による承諾なくしては、これを撤回もしくは取り消すことができない。
3. 乙が、本契約の賃貸借期間開始前といえども本契約を解約するときは、乙は甲に対し1ケ月分の使用料金等相当額を支払うものとする。
4. 甲は業務上の都合により本物件を他の目的に使用するときは、前前項の通知に従い本契約を解除しても、乙は何等意義を申し立てないものとする。
第8条(明け渡し)
乙は、本契約の賃貸借期間の満了もしくは前条による解約になったときは、無条件で賃貸借成立当時の原状に復した上で、直ちに甲に明け渡すものとする。
2. 乙が明け渡しをしないときは、甲は甲の指定する者に搬出させるものとする。搬出費、保管費は乙の負担とする。なお、その保管については、乙が一切の責を負うものとする。
3. 乙が明け渡しを遅延した時は、本契約の終了日または解約日の翌日から明け渡し完了日に至るまでの日額使用料金相当額の倍額の使用損害金および諸料金相当額を甲に支払うものとする。
4. 明け渡しの際、乙は、移転料等名目の如何を問わず金員の請求をすることはできないものとする。
第9条(禁止事項)
乙は、以下のことをしてはならない。
一 本物件を第三者に使用させあるいは転貸もしくは使用権を譲渡すること。
二 標記表示の表示区画に甲に無断で標記表示の車両以外の車両、物品を置くこと。
三 本件駐車場に建物その他の工作物を設置し、又は現状に変更を加えること
四 本件駐車場の契約区画以外の場所に駐車すること
五 有害、危険若しくは高音、騒音等近隣の迷惑となる行為をすること
第10条(乙の通知義務)
乙は、以下の事項が変更になったときは直ちに甲に届出しなければならない。
一 住所、勤務先、電話等が変更になったとき。
二 車種、車名、登録番号が変更になったとき。
第11条(車庫証明)
甲は乙の請求により、自動車保管場所使用承諾証明書を発行する。ただし、使用料金等の滞納および不正な請求の場合発行を拒否することができる。
2. 前項の場合、乙は、自動車保管場所使用承諾証明書発行一通につき標記表示金額を甲に支払わなければならない。
第12条(管轄裁判所)
本契約に関する一切の紛争については、甲の所在地を管轄する裁判所をもって第一審の管轄裁判所とする。
第13条(協議)
甲および乙は、本契約書に定めがない事項および本契約書の条項の解釈について疑義が生じた場合は、甲・乙誠意をもって協議し、解決するものとする。
駐車場賃貸借契約書の解説
月極駐車場の賃貸借契約をするに当たって、月極駐車場のオーナー、管理会社側の視点に立って解説をしていきます。
第1条(契約の締結)
第1条で契約の内容を明記します。
貸主と借主が契約をします、ということを記載するだけですので、特に問題はないでしょう。
第2条(契約期間)
第2条で契約期間について記載します。
契約期間を確認し、契約更新が可能かどうかについても記載します。
契約期間などの条件そのものは 1ページ目の「契約条件」に記載してありますので、その通り契約します、という書き方になっています。
第3条(駐車料金)
第3条で駐車料金について記載します。
ここも契約期間と同じく、「契約条件」に記載しています、という内容です。
2項目目は、消費税の税率が変わったり、物価変動が起こった場合は契約期間中であっても 1ヶ月前に予告することで自由に家賃を変更できる、という条項です。
これがないと、借主が認めない限り、契約更新のタイミング以外で月極駐車場料金を変更することができなくなります。
3項目目は、月の途中から契約をしたり、途中で解約する場合は、日割り計算しますよ、と言う内容です。
日割り計算をしたくない場合は、この項目を削除すれば OKです。また、契約期間は常に月末であることを明記しておくとよりいいでしょう。
ちなみに、月極駐車場は、賃貸マンションなどの住居の賃貸借契約と違い、貸主側がかなり自由な裁量で契約をすることが可能になっています。
第4条(敷金)
第4条で敷金について記載します。
月極駐車場の場合は、住居の場合と違い解約の際の原状回復や清掃などの費用のための敷金ということより、料金の滞納など万一に際に備えた保証金、と言う意味合いが強いものです。
また、敷金の返済については住居の契約の際もトラブルの元となりやすい箇所ですので、しっかりとした内容の条項を設けておくべき箇所です。
例えば、当たり前のように感じますが、敷金の返済には利息を付けないとか、振込手数料は差し引いて振り込むとか、そういったことも明記しておく方が安心です。
第5条(乙の賠償義務)
第5条は賠償義務です。
これは、月極駐車場や隣の車などにぶつけた場合はその損害賠償をする必要があります、と言うあたりまえの内容ですね。
第6条(甲の免責)
第6条は貸主側の免責事項です。
こういう場合は貸主の責任ではありません、と言う内容を明記します。
この項目も当たり前といえば当たり前ですが、貸主に責任がないことで問題が発生しても責任を負いません、と言う内容です。
とはいえ、この項目がない場合は、何かにつけて貸主が責任を負わされる可能性も否定できませんので、しっかりと書いておきましょう.
第7条(解約)
第7条は解約についての内容です。
1項目目は何かしらのトラブルが発生した場合は、直ちに契約を解除することができることを書いておきます。
これを書いておくことで、万一重大な問題が発生した場合に即刻解約ができるようにしておきます。
2項目目、3項目目、4項目目は、通常の手続きを踏んで解約をする場合の内容です。1枚目の「解約予告」の欄にも書いてありますが、解約をする場合は、お互いに 1ヶ月前に書面で告知することで解約ができると書いておきます。
先にも書きましたが、月極駐車場の契約は、住居の賃貸契約と違い、契約の途中であっても貸主側も 1ヶ月前に告知すれば契約を解除することができます。
なので、月極駐車場経営をしていたところにマンションを建てたいなぁ、と思った場合は、1ヶ月前に契約解除を告知すればそれで足りるわけです。
住居の賃貸契約の場合は、住居なので貸主側から一方的に契約を解除することはできなくなっていますが、月極駐車場の場合と大きく違うところです。
第8条(明け渡し)
第8条は明け渡しについてです。
契約が終了するまでに契約時の原状回復をした上で、車を移動させてくださいね、と言うことです。
2項目目、3項目目は、明け渡しがされない場合は、レッカー移動させます。そして、その費用は借り主に請求しますよ。そして、明け渡さなかった期間の費用は損害賠償金も含めて請求しますよ。と言う内容です。
4項目目は、通常の解約の場合はあまり問題にならないと思いますが、第7条にある貸主側から一方的に契約の解除を告知した場合であっても、貸主側からは何も支払いをするものではありません、と言う内容です。
第9条(禁止事項)
第9条は禁止事項です。
月極駐車場を利用するに当たって禁止する内容を明記しておきます。
契約している車以外を置くことを禁止していますので、例えば、バイクや自転車を置くことも禁止している内容になります。
また、勝手に屋根を作ることなども禁止してありますが、ここに禁止事項を明記することで、第7条の解約の内容と関連し、これに違反すると直ちに解約することも可能になります。
第10条(乙の通知義務)
第10条は通知義務の内容です。
借主の住所などが変わったときや契約している車が変わった場合には届け出をするよう求めるものです。
第11条(車庫証明)
第11条は車庫証明に関する内容です。
車庫証明に関しては「自動車保管場所証明書(車庫証明)の申請手続きの流れのまとめ」「自動車保管場所証明書(車庫証明)の申請に必要な書類の説明まとめ」にも解説をしていますが、正確には「自動車保管場所証明書(車庫証明)」を取得する際に必要な「自動車保管場所使用承諾証明書」の発行に関する内容です。
「自動車保管場所証明書」を発行する手数料を取る場合や、車庫飛ばし用の駐車場として使われないようにするため、最低契約期間を設ける場合などの対策に付いて記載する箇所です。
第12条(管轄裁判所)
第12条は管轄裁判所についてです。
月極駐車場の契約ですので、借主も貸主も近くであることが多いと思いますが、万一のトラブルによって裁判沙汰になる場合に、ものすごく遠くで裁判を起こされると裁判に出るたびに費用がかさみます。
そうならないようにするため、裁判を起こす場合は貸主の近くの裁判所にしましょうね、と書いておきます。
第13条(協議)
第13条は協議についてです。
この部分は日本的な内容なのですが、契約書に載っていない内容で問題があった場合は、お互い誠意を持って対応しましょう、と言う内容ですね。
賃貸借契約書の記入例について
その他、1ページ目の「敷金」は、記入例では「賃料 1ヶ月分」と書いていますが、「金 50,000円」という書き方などでも問題ありません。
駐車場賃貸借契約書のまとめ
この駐車場の賃貸借契約書は、不動産会社である管理会社が契約するものを想定した内容になっています。
でも、この記事を読んで月極駐車場の賃貸借契約書を作成する方は、自らがオーナーであり、管理会社を通さずに契約をしようと考えている方だと思われますので、1枚目の真ん中あたりにある「貸主」「甲の代理人」「借主」とある箇所の「甲の代理人」の欄は削除してしても問題ありません。
「貸主」がオーナーで、「甲の代理人」は管理会社を記入する欄だからです。
ただ、月極駐車場の契約は可能な限り不動産会社に委託し、契約の管理をお願いする方がいいのではないか、と思います。
理由は、やはりトラブルも少なからず発生するからですね。
不動産管理会社であれば、それらのトラブルも含めて日々の業務経験がありますので、大きな問題にならないように対処してもらえるんじゃないかと思います。
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